金子未弥×カニエ・ナハ《未発見の小惑星観測所_NOHGA HOTEL KIYOMIZU KYOTO〉における小惑星観測記録詩》

Asteroid Observation Record Poem of 《Undiscovered Asteroids Observatory_NOHGA HOTEL KIYOMIZU KYOTO》

  • Year:2022
  • Area:

    NOHGA HOTEL KIYOMIZU KYOTO

    (小惑星観測ノススメ)

    この場所で発掘されたという、何百年も前、平家の石垣に使われていたという石のかたちをした惑星、そもそも石そのものはおそらく何千年・何万年の時を経ていて、それが描かれている支持体の木の板には年輪として何十年もの年月が刻まれていて、惑星の表面に目をこらすと見えて来る〈地図〉には、金子未弥さんが三十人ほどのひとたちから聞いた(電話で、あるいは直接に…)、そのひとたちが何年もの間あたため、あるいは何十年も記憶の底に眠っていた、場所にまつわる記憶たちが刻まれている、それらをもとにして、およそひと月かけて金子さんが描いた惑星——、こうして幾重もの時間が交響し、いくつもの空間が交通しながら、一つの〈小惑星〉として、このノーガホテル 清水 京都のロビーに今、浮かんでいる。それは遠くから見ると、どこか脳が、この惑星に刻まれたたくさんのひとたちの、あるいはここを往来するたくさんのひとたちの集合体としての脳が、惑星となって浮かんでいるようにも見える。わたしはひととき、この〈小惑星〉を観測しながら、〈地図〉のなかを歩いて、ときに…いや、しばし、迷子になりながら、やがて地図が語りかけてくる無数の物語に耳を傾けた。地図の声は、やがてひとりひとりの声になり、それはやがてわたし自身の記憶のなかの人たちの声にも重なって。きっとこの小惑星をこれから観測する、ひとりひとりが、それぞれの内なる地図、内なる惑星と交信しあって、新しく、そして懐かしい、あまりにも遠く、そしてあまりにも近しい、それぞれの物語を目撃し、耳にすることになるはず。まずはしばし、ここに佇んで、じっくり(時間のゆるすかぎり…)観測してみてほしい。ゆっくりと、まずは惑星の路地へと降り立って。

    カニエ・ナハ(詩人)

    制作協力: 林敬庸